社員インタビュー

群知能はAI研究を次のステージに上げる突破口?―12か国語を操る研究者が目指すもの

今回の社員インタビューはCross Labsの主席研究員であるオラフさんです。
ALIFE2018におけるカンファレンス ‘Beyond AI’のプログラム議長を務め、ニューヨークの学際的研究機関であるYHouseの創設に尽力するなど精力的に研究活動に邁進するオラフ研究員の、ルーツを探ってみました。


Olafさんの専門分野であるSWARM AI(=群知能)とはどの様なものですか?

一つ一つの単体だと意思を持たないのに、集団になると意思をもつシステムのことを指します。
例えば、人間の体は数十兆個もの細胞で出来ています。一つ一つの細胞は意思を持たないのに、どうやって私たちの体が動いているか不思議ではありませんか?

脳が細胞に命令を送っているのではないのですか?

脳も単なる細胞の集合体にしか過ぎません。細胞単位にバラバラにしたとして、その細胞は単体では何の制御も出来ないでしょう。ところがそれが集まって脳を形成した途端、体を制御するどころか今日は何を食べようとか、どこへ行こうとか意思を持つようになる。細胞単体と集合体で一体どうしてそんな違いが生じるのか、興味がわきませんか?
動物の群れも群知能の引き合いによく出されます。鳥は1羽だとシンプルに飛ぶのに、群れになった途端にまるでマスゲームのような複雑な軌跡を描きます。しかも鳥たちはお互いにぶつかる事もなく自然に飛んでいるのです。人間だったら事前に練習しないと絶対に無理ですよね。
このような集団としての知能を群知能と言い、シミュレーターや関数の最適化などで使われていますが、今後AIが実社会で使われる為には不可欠な技術になります。

具体的にどういったところで役に立つのでしょうか?

5つのAIが存在したとしましょう。それぞれ違う設計や学習をされていたとして、その5つが連携しながら同じ命題を解いたらどうでしょうか。独自の経験やバイアスを持ったAI達が相談し合って導き出した手段はより魅力的だと思いませんか。例えば人間の体には五感がありますよね。目の役割をするAI、耳の役割をするAI、鼻の役割をするAI、舌の役割をするAI、手を動かすAIの5つを開発しそれぞれを連携させれば、人間のように物事を感知し思考をするAIが生まれるかもしれません。

別々のAIが一つのグループになるわけですね。

同じプログラムをされた5つのAIだとしても、それぞれが違う経験をしそれを随時共有し合えば、成長のスピードは飛躍的に早くなるはずです。
つまり群知能はAIの研究を次のステージに上げてくれる突破口になる可能性を秘めているのです。

すごい可能性を感じます。そもそもOlafさんが群知能に興味を持ったきっかけは何なのでしょう?

僕は昔から言語に強い興味がありました。どうして人間は他の動物に比べ複雑なコミュニケーション方法を持っているのか。異なる言語で考える場合、人間の意識もまた変化するのか。言語を勉強するうち、コンピュータに言語を処理させる自然言語処理と出会ったのがAIに興味を持ったきっかけです。
でも昔から意識にも興味があって、人間の体を構成している原子はそれ単体だとなんの意思も持たないのに体になると心が生まれて意思を持つ。それが不思議だったので、群知能に興味を持ったのも自然の流れだったのかもしれませんね。

やはり子供のころから科学や研究が好きだったのですか?

数学は好きでした。チェスや囲碁など戦略的なゲームにはまっていましたね。考えることが好きで、昔は催眠術も趣味のひとつでした。

催眠術?

はい、自分の名前を忘れるとか、数を数えられなくするとか。本を読みながら見様見真似でやっていましたが、意外と上手くいくんですよね。

先ほど言語に興味があると話されていましたが、Olafさん自身外国語は得意だとか。

そうですね…日常会話レベルを入れれば12か国語を話せます。

12か国!すごいですね!

生まれ育ったのはベルギーのブリュッセルで、多文化が混在する街だったことが大きかったと思います。フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、イタリア語、英語、中国語……、あと簡単な会話なら日本語も話せます。

英語も苦労する私としては尊敬しかありません!それだけ多くの言葉が話せる中で、なぜ日本に来られたのですか?

僕は大学4年生の時に機械学習の会社を立ち上げたのですが、研究活動よりも日々経営活動に時間がとられてしまって、あまり面白くなかった。もう一度大学でAIについて研究したいと思っていた時に、東京大学の研究室を知り、ぜひそこで研究したいと思いました。それが日本に来たきっかけです。
もともと空手を習っていたこともあり、日本に親しみもありました。東京のイメージはハイテクノロジー、ファッショナブル、豊かな文化と完璧でした。

実際住んでみてどうですか?

日本には大学院の時代から10年も住んでいるので、すでに僕にとって日本は“ホーム”です。食べ物がおいしいのが大好きなポイントです。寿司やうどん、鍋などヘルシーでおいしい物が多い。今僕は京都に住んでいますが、京都の景色は美しく風情があって気に入っています。

日本を満喫されていますね。クロスコンパスに入ったきっかけは何だったのでしょうか?

クロスコンパスの研究部部長であるアントワーヌ氏に誘われたのがきっかけです。彼と話す中で、研究と産業の橋渡しの場であるCross Labsの構想が生まれ、ぜひ実現したいと思ったのです。かねてから研究結果は社会に還元されてこそ意味があると思っていたので、僕の研究している群知能を実社会に活かせるまたとない機会だと感じ参加しました。

今後クロスコンパスでどういった事を実現していきたいですか?

やはりテクノロジーで社会問題を解決するところまでを実現していきたいですね。
研究者と技術者が横にいるからこそできる事があると思います。ベル研究所のように、基礎研究に力を入れながら新しい技術や製品を開発していくことが理想です。そして、クロスコンパスの仲間たちとならそれができると感じています。

ありがとうございました。